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宅建勉強12月11日(月)
住宅比較の吉田です。
Aがその所有する甲建物について、Bとの間で、①Aを売主、Bを買主とする売買契約を締結した場合と、②Aを贈与者、Bを受贈者とする負担付贈与契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。なお、これらの契約は、令和3年7月1日に締結され、担保責任に関する特約はないものとする。
- ①の契約において、Bが手付を交付し、履行期の到来後に代金支払の準備をしてAに履行の催告をした場合、Aは、手付の倍額を現実に提供して契約の解除をすることができる。
- ②の契約が書面によらずになされた場合、Aは、甲建物の引渡し及び所有権移転登記の両方が終わるまでは、書面によらないことを理由に契約の解除をすることができる。
- ②の契約については、Aは、その負担の限度において、売主と同じく担保責任を負う。
- ①の契約については、Bの債務不履行を理由としてAに解除権が発生する場合があるが、②の契約については、Bの負担の不履行を理由としてAに解除権が発生することはない。
“①の契約において、Bが手付を交付し、履行期の到来後に代金支払の準備をしてAに履行の催告をした場合、Aは、手付の倍額を現実に提供して契約の解除をすることができる。”誤り。手付の交付があったときは、相手方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付を放棄して、売主は手付の倍額を現実に提供することで契約解除できます(民法557条1項)。判例では、買主が残代金を用意し、すぐに支払える準備をした上で売主に履行の催告をした場合には、契約の履行に着手したと認めるのが相当であるとしています(最判昭40.12.14)。買主Aが契約の履行に着手した後ですから、売主Aは手付による契約解除をすることができません。
“②の契約が書面によらずになされた場合、Aは、甲建物の引渡し及び所有権移転登記の両方が終わるまでは、書面によらないことを理由に契約の解除をすることができる。”誤り。判例では、書面によらない負担付贈与契約では、当事者一方が契約の履行に着手した後に、書面によらないことを理由に契約の全部または一部を取り消すことは許されないとしています(最判昭28.9.3)。
書面によらない贈与では履行が終わった部分を除き、各当事者が撤回できるというのが原則です(民法550条)。しかし、これをそのまま負担付贈与に適用すると、贈与を履行をしたのに負担部分だけが取り消されたり、負担を履行したのに贈与が取り消されたりといったことが起こり得るからです。
“②の契約については、Aは、その負担の限度において、売主と同じく担保責任を負う。”[正しい]。負担付贈与契約における贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保責任を負います(民法551条2項)。受贈したものについて契約不適合があるときには、履行の追完、代金減額、契約解除、損害賠償請求ができます。
“①の契約については、Bの債務不履行を理由としてAに解除権が発生する場合があるが、②の契約については、Bの負担の不履行を理由としてAに解除権が発生することはない。”誤り。売買契約では当事者の一方が債務を履行しない場合に契約解除ができます(民法541条、民法542条)。負担付贈与契約には双務契約の規定が準用されるので、売買契約と同じく相手方の債務不履行があれば契約解除することができます(民法553条)。
したがって正しい記述は[3]です。
宅建勉強12月10日(金)
相続(令和3年7月1日に相続の開始があったもの)に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
- 相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。
- 被相続人の子が相続開始以前に死亡したときは、その者の子がこれを代襲して相続人となるが、さらに代襲者も死亡していたときは、代襲者の子が相続人となることはない。
- 被相続人に相続人となる子及びその代襲相続人がおらず、被相続人の直系尊属が相続人となる場合には、被相続人の兄弟姉妹が相続人となることはない。
- 被相続人の兄弟姉妹が相続人となるべき場合であっても、相続開始以前に兄弟姉妹及びその子がいずれも死亡していたときは、その者の子(兄弟姉妹の孫)が相続人となることはない。
“相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。”正しい。相続回復の請求権は、表見相続人が真正相続人の相続権を否定し相続の目的たる権利を侵害している場合に、真正相続人が自己の相続権を主張して表見相続人に対し侵害の排除を請求することにより、真正相続人に相続権を回復させようとするものです(最判昭53.12.20)。相続回復の請求権は、相続人またはその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないとき、または相続開始から20年間経過したときに時効によって消滅します(民法884条)。
“被相続人の子が相続開始以前に死亡したときは、その者の子がこれを代襲して相続人となるが、さらに代襲者も死亡していたときは、代襲者の子が相続人となることはない。”[誤り]。子が法定相続人となる場合、子が死亡していれば孫、孫が死亡していればひ孫というように直系卑属への代襲相続、再代襲相続が認められています(民法887条)。
“被相続人に相続人となる子及びその代襲相続人がおらず、被相続人の直系尊属が相続人となる場合には、被相続人の兄弟姉妹が相続人となることはない。”正しい。法定相続人の範囲ですが、死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、「子」→「直系尊属」→「兄弟姉妹」の順序で配偶者と一緒に相続人になります。直系尊属が存命している場合は兄弟姉妹が相続人となることはありません(民法889条)。

“被相続人の兄弟姉妹が相続人となるべき場合であっても、相続開始以前に兄弟姉妹及びその子がいずれも死亡していたときは、その者の子(兄弟姉妹の孫)が相続人となることはない。”正しい。兄弟姉妹が相続人となるケースで、兄弟姉妹が死亡等で相続できない場合にはその兄弟姉妹の子が代襲相続しますが、子が相続人となるケース(肢2)とは異なり、兄弟姉妹の代襲相続は一代限りで再代襲は認められていません(民法889条2項)。したがって誤っている記述は[2]です。
宅建勉強12月9日(木)
保証に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、保証契約は令和2年4月1日以降に締結されたものとする。
- 特定物売買における売主の保証人は、特に反対の意思表示がない限り、売主の債務不履行により契約が解除された場合には、原状回復義務である既払代金の返還義務についても保証する責任がある。
- 主たる債務の目的が保証契約の締結後に加重されたときは、保証人の負担も加重され、主たる債務者が時効の利益を放棄すれば、その効力は連帯保証人に及ぶ。
- 委託を受けた保証人が主たる債務の弁済期前に債務の弁済をしたが、主たる債務者が当該保証人からの求償に対して、当該弁済日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
- 委託を受けた保証人は、履行の請求を受けた場合だけでなく、履行の請求を受けずに自発的に債務の消滅行為をする場合であっても、あらかじめ主たる債務者に通知をしなければ、同人に対する求償が制限されることがある。
解説
- “特定物売買における売主の保証人は、特に反対の意思表示がない限り、売主の債務不履行により契約が解除された場合には、原状回復義務である既払代金の返還義務についても保証する責任がある。”正しい。特定物売買において、買主から売主に前払金が支払われた後、売主の債務不履行によって契約が解除された場合は、売主の債務を保証していた保証人の保証債務の範囲は売主の代金返還債務についても及びます(最判昭40.6.30)。主たる債務やそれが転じた損害賠償だけでなく、契約解除後の原状回復義務にも保証の責任を認めた判例です。
- “主たる債務の目的が保証契約の締結後に加重されたときは、保証人の負担も加重され、主たる債務者が時効の利益を放棄すれば、その効力は連帯保証人に及ぶ。”[誤り]。主たる債務の目的が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されません(民法448条2項)。例えば、主たる債務が1,000万円から1,200万円に増加しても、保証債務は1,000万円のままということです。
また、時効の利益の放棄は援用と同様に相対効だとされているので、主たる債務者が時効完成後に時効の利益を放棄した場合でも、(連帯)保証人にはその効果は及びません(大判大8.6.24)。 - “委託を受けた保証人が主たる債務の弁済期前に債務の弁済をしたが、主たる債務者が当該保証人からの求償に対して、当該弁済日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。”正しい。委託を受けた保証人が弁済期前に弁済した場合に、主たる債務者が債権者に対し、その債務消滅行為以前の相殺の原因を有していたときは、その反対債権は(求償に応ずることの代わりに)保証人に移転し、保証人が債権者に対して履行を請求することになります(民法459条の2第1項)。
- “委託を受けた保証人は、履行の請求を受けた場合だけでなく、履行の請求を受けずに自発的に債務の消滅行為をする場合であっても、あらかじめ主たる債務者に通知をしなければ、同人に対する求償が制限されることがある。”正しい。委託を受けた保証人が弁済等をするときには、履行の請求を受けたかどうかにかかわらず主たる債務者への事前通知が必要です。この通知を怠った場合、主たる債務者は債権者に対抗できた事由をもって保証人に対抗できます(民法463条1項)。
例えば、債権者Aが主たる債務者Bに対して1,000万円の金銭債権をもち、逆にBがAに対して300万円の金銭債権をもっていたとします。このとき、保証人Cが1,000万円をAに弁済したときには、CはBに対して1,000万円を求償できますが、Bは相殺可能だった300万円を差し引いた700万円分だけ求償に応じれば良いということです。その相殺の反対債権は保証人に移転し、保証人が債権者に対して履行を請求することになります。
宅建勉強12月8日(水)
問6
AとBとの間で令和3年7月1日に締結された売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、売買契約締結後、AがBに対し、錯誤による取消しができるものはどれか。
- Aは、自己所有の自動車を100万円で売却するつもりであったが、重大な過失によりBに対し「10万円で売却する」と言ってしまい、Bが過失なく「Aは本当に10万円で売るつもりだ」と信じて購入を申し込み、AB間に売買契約が成立した場合
- Aは、自己所有の時価100万円の壺を10万円程度であると思い込み、Bに対し「手元にお金がないので、10万円で売却したい」と言ったところ、BはAの言葉を信じ「それなら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合
- Aは、自己所有の時価100万円の名匠の絵画を贋作だと思い込み、Bに対し「贋作であるので、10万円で売却する」と言ったところ、Bも同様に贋作だと思い込み「贋作なら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合
- Aは、自己所有の腕時計を100万円で外国人Bに売却する際、当日の正しい為替レート(1ドル100円)を重大な過失により1ドル125円で計算して「8,000ドルで売却する」と言ってしまい、Aの錯誤について過失なく知らなかったBが「8,000ドルなら買いたい」と言って、AB間に売買契約が成立した場合
解説
錯誤とは、表意者が意思と異なる意思表示をし、それを表意者自身が気付いていない状態です。当事者間における錯誤による取消しが可能かどうかは、以下のチャートに従って考えます(民法95条)。

- “Aは、自己所有の自動車を100万円で売却するつもりであったが、重大な過失によりBに対し「10万円で売却する」と言ってしまい、Bが過失なく「Aは本当に10万円で売るつもりだ」と信じて購入を申し込み、AB間に売買契約が成立した場合”誤り。Aは意思に反して「10万円で売る」と意思表示しているので、契約上重要な部分に表示に錯誤が認められます。表意者Aに重大な過失があり、相手方Bは善意無過失ですから、Aは錯誤による取消しができません。
- “Aは、自己所有の時価100万円の壺を10万円程度であると思い込み、Bに対し「手元にお金がないので、10万円で売却したい」と言ったところ、BはAの言葉を信じ「それなら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合”誤り。Aは誤った思い込みをしていますが、意思と意思表示は合致しているので錯誤はありません。この場合、取引の安全に配慮して相手方Bを保護するため、Aは錯誤による取消しをすることができません。
- “Aは、自己所有の時価100万円の名匠の絵画を贋作だと思い込み、Bに対し「贋作であるので、10万円で売却する」と言ったところ、Bも同様に贋作だと思い込み「贋作なら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合”[正しい]。「10万円で売る」という意思表示をするに至った動機に思い違いがあり、それが相手方に表示されているので動機の錯誤があります。Aの過失の有無は明らかではありませんが、Bも同一の錯誤(共通錯誤)に陥っていたので、Aは錯誤による取消しができます。
- “Aは、自己所有の腕時計を100万円で外国人Bに売却する際、当日の正しい為替レート(1ドル100円)を重大な過失により1ドル125円で計算して「8,000ドルで売却する」と言ってしまい、Aの錯誤について過失なく知らなかったBが「8,000ドルなら買いたい」と言って、AB間に売買契約が成立した場合”誤り。Aの「100万円で売りたい」という意思と、「8,000ドル×100円=800,000円で売る」という表示が食い違っており、20万円の違いは契約上重大なので表示の錯誤があります。しかし、Aの錯誤は重大な過失によるものであり、相手方Bは善意無過失ですから、Aは錯誤による取消しができません。
したがって錯誤による取消しができるものは[3]です。
宅建勉強12月7日(火)
AとBとの間で令和3年7月1日に締結された委任契約において、委任者Aが受任者Bに対して報酬を支払うこととされていた場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
- Aの責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合、Bは報酬全額をAに対して請求することができるが、自己の債務を免れたことによって得た利益をAに償還しなければならない。
- Bは、契約の本旨に従い、自己の財産に対するのと同一の注意をもって委任事務を処理しなければならない。
- Bの責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合、BはAに対して報酬を請求することができない。
- Bが死亡した場合、Bの相続人は、急迫の事情の有無にかかわらず、受任者の地位を承継して委任事務を処理しなければならない。
Aの責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合、Bは報酬全額をAに対して請求することができるが、自己の債務を免れたことによって得た利益をAに償還しなければならない。”[正しい]。委任者の帰責事由により委任が終了した場合、委任に関する報酬の定めではなく契約の一般原則に従って処理されます。債権者(=委任者)有責により債務を履行することができなくなった場合、債務者(=受任者)はその反対給付である報酬全額の支払いを請求できます。ただし、債務を免れたことによって得た利益がある場合、それを債権者に償還することになります(民法536条2項)。
“Bは、契約の本旨に従い、自己の財産に対するのと同一の注意をもって委任事務を処理しなければならない。”誤り。受託者は、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務(善管注意義務)を負います(民法644条)。これは自己の財産と同一の注意義務より重く、受任者と同様な職業・地位にある者に対して一般に期待される水準の義務です。
“Bの責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合、BはAに対して報酬を請求することができない。”誤り。受任者の帰責事由により委任事務が途中で履行できなくなったときでも、受任者は既にした履行の割合に応じて報酬を請求することが可能です(民法648条3項)。
“Bが死亡した場合、Bの相続人は、急迫の事情の有無にかかわらず、受任者の地位を承継して委任事務を処理しなければならない。”誤り。受任者の死亡は委任契約の終了事由です(民法653条)。委任終了時に、急迫の事情がある場合、受任者の相続人や法定代理人は委任事務が終了するまで必要な処分をしなければなりません(民法654条)。これは急迫の事情がある場合に限られるので、「急迫の事情の有無にかかわらず」とする本肢は誤りです。
したがって正しい記述は[1]です。
宅建勉強12月6日(月)
問2
令和3年7月1日に下記ケース①及びケース②の保証契約を締結した場合に関する次の1から4までの記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
(ケース①)個人Aが金融機関Bから事業資金として1,000万円を借り入れ、CがBとの間で当該債務に係る保証契約を締結した場合
(ケース②)個人Aが建物所有者Dと居住目的の建物賃貸借契約を締結し、EがDとの間で当該賃貸借契約に基づくAの一切の債務に係る保証契約を締結した場合
- ケース①の保証契約は、口頭による合意でも有効であるが、ケース②の保証契約は、書面でしなければ効力を生じない。
- ケース①の保証契約は、Cが個人でも法人でも極度額を定める必要はないが、ケース②の保証契約は、Eが個人でも法人でも極度額を定めなければ効力を生じない。
- ケース①及びケース②の保証契約がいずれも連帯保証契約である場合、BがCに債務の履行を請求したときはCは催告の抗弁を主張することができるが、DがEに債務の履行を請求したときはEは催告の抗弁を主張することができない。
- 保証人が保証契約締結の日前1箇月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示していない場合、ケース①のCがAの事業に関与しない個人であるときはケース①の保証契約は効力を生じないが、ケース②の保証契約は有効である。
ケース①は普通の保証契約、ケース②は根保証契約です。普通の保証契約特定の債務とその利息や損害賠償金を保証する
例)住宅ローンの保証人根保証契約一定範囲の取引で生じる不特定多数の債務とその利息や損害賠償金等を保証する
例)賃貸借契約の保証人
- “ケース①の保証契約は、口頭による合意でも有効であるが、ケース②の保証契約は、書面でしなければ効力を生じない。”誤り。保証契約は書面(または電磁的記録)でしなければ効力を生じません(民法446条2項)。これはケース①でもケース②でも同じなので、口頭による合意で有効としている本肢は誤りです。
- “ケース①の保証契約は、Cが個人でも法人でも極度額を定める必要はないが、ケース②の保証契約は、Eが個人でも法人でも極度額を定めなければ効力を生じない。”誤り。極度額とは保証人が支払の責任を負う金額の上限のことです。民法改正により個人根保証契約においては常に極度額の定めが必要となりました(民法465条の2第2項)。これにより賃借人の賃料債務を保証する契約等が大きな影響を受けることになります。※改正前は極度額の定めは貸金等債務がある場合に限られていました
ケース①では被担保債権が特定されており、保証契約後に保証内容が加重されることはないため極度額の定めは不要です(民法448条)。ケース②のうち個人が保証人となる場合にのみ極度額の定めが必要です。本肢は法人保証の場合にも必要としているので誤りです。 - “ケース①及びケース②の保証契約がいずれも連帯保証契約である場合、BがCに債務の履行を請求したときはCは催告の抗弁を主張することができるが、DがEに債務の履行を請求したときはEは催告の抗弁を主張することができない。”誤り。連帯保証の保証人は「催告の抗弁権」および「検索の抗弁権」を有しません(民法454条)。これはケース①でもケース②でも同じです。よって、CとEどちらも、債権者から履行の請求を受けたときに主たる債務者に催告すべきことを請求できません。
- “保証人が保証契約締結の日前1箇月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示していない場合、ケース①のCがAの事業に関与しない個人であるときはケース①の保証契約は効力を生じないが、ケース②の保証契約は有効である。”[正しい]。民法改正により、経営者やそれに準ずる者以外の個人が事業用の貸金等債務を主たる債務をする保証契約、事業用の貸金等債務が含まれる根保証契約を契約しようとするときは、契約前1カ月以内に公正証書による意思表示が必要になりました(民法465条の6第1項)。個人保証人の保護のためです。
ケース①では事業資金を借り入れていますので、保証人Cが事業に関与しない個人であるときは公正証書の作成がなければ保証契約は効力を生じません。ケース②は事業用の貸金等業務ではないので公正証書がなくても契約は有効です。
したがって正しい記述は[4]です。
宅建勉強12月5日(月)
住宅比較株式会社の吉田です。
Aが購入した甲土地が他の土地に囲まれて公道に通じない土地であった場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
- 甲土地が共有物の分割によって公道に通じない土地となっていた場合には、Aは公道に至るために他の分割者の所有地を、償金を支払うことなく通行することができる。
- Aは公道に至るため甲土地を囲んでいる土地を通行する権利を有するところ、Aが自動車を所有していても、自動車による通行権が認められることはない。
- Aが、甲土地を囲んでいる土地の一部である乙土地を公道に出るための通路にする目的で賃借した後、甲土地をBに売却した場合には、乙土地の賃借権は甲土地の所有権に従たるものとして甲土地の所有権とともにBに移転する。
- Cが甲土地を囲む土地の所有権を時効により取得した場合には、AはCが時効取得した土地を公道に至るために通行することができなくなる。
“甲土地が共有物の分割によって公道に通じない土地となっていた場合には、Aは公道に至るために他の分割者の所有地を、償金を支払うことなく通行することができる。”[正しい]。分割によって公道に通じない土地が生じた場合、その土地の所有者は、他の分割者の所有する土地(分割後の残余地)にのみ道路を開設することができます。この場合には償金を要しません(民法213条1項)。

“Aは公道に至るため甲土地を囲んでいる土地を通行する権利を有するところ、Aが自動車を所有していても、自動車による通行権が認められることはない。”誤り。他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地(囲繞地)を通行することができます(民法210条1項)。徒歩に留まらず自動車による通行を前提とした通行権についても、自動車による通行を認める必要性、周辺の土地の状況、他の土地の所有者が被る不利益等の事情を考慮した上で認められることがあります(最判平18.3.16)。当然に否定されるわけではないので、「認められることはない」とする本肢は誤りです。実際に上記裁判の差戻し審では自動車による通行権を認める判決をしています。
“Aが、甲土地を囲んでいる土地の一部である乙土地を公道に出るための通路にする目的で賃借した後、甲土地をBに売却した場合には、乙土地の賃借権は甲土地の所有権に従たるものとして甲土地の所有権とともにBに移転する。”誤り。乙土地を通行するために当該土地の所有者と賃貸借契約を締結した場合、Aは賃貸借契約に基づき当該土地を通行することができます。しかし、甲土地の所有権がAからBに移転しても乙土地の賃借権は当然には移転せず、依然としてAと乙土地の所有者の間に存在します。
したがって、Bが乙土地を通行できるようにするには、賃借権の譲渡または転貸について乙土地の所有者の承諾が必要です。承諾が得られない場合は、囲繞地通行権を主張して甲土地を囲んでいる他の土地のうち、必要かつ損害が最少の部分を通行することになります。
なお、乙土地の一部に設定されていたのが甲土地のための通行地役権だった場合には、甲土地の所有権に付従して通行地役権もBに移転します(民法281条)。
“Cが甲土地を囲む土地の所有権を時効により取得した場合には、AはCが時効取得した土地を公道に至るために通行することができなくなる。”誤り。通行権には次の2種類があります。地役権としての通行権(通行地役権)当事者同士の約定等によって設定される物権袋地の所有者が囲まれている他の土地を通行できる権利(囲繞地通行権)法律上当然に認められる権利通行地役権は、承役地(本肢だとCが取得した土地)が時効取得されると消滅しますが、囲繞地通行権は法律上当然に認められる権利ですので、甲土地を囲む土地の所有者が変わっても、Aは通行権を主張することが可能です(民法289条民法210条)。よって、袋地の所有者Aが通行できなくなることはありません。
したがって正しい記述は[1]です。
宅建勉強12月4日(土)
住宅比較株式会社の吉田です。
宅地建物取引業者Aが、自ら売主として宅地建物取引業者ではない買主Bに新築住宅を販売する場合における次の記述のうち、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律の規定によれば、正しいものはどれか。
- Bが建設業者である場合、Aは、Bに引き渡した新築住宅について、住宅販売瑕疵担保保証金の供託又は住宅販売瑕疵担保責任保険契約の締結を行う義務を負わない。
- Aが住宅販売瑕疵担保責任保険契約を締結する場合、当該契約は、BがAから当該新築住宅の引渡しを受けた時から2年以上の期間にわたって有効なものでなければならない。
- Aが住宅販売瑕疵担保責任保険契約を締結した場合、A及びBは、指定住宅紛争処理機関に特別住宅紛争処理の申請をすることにより、当該新築住宅の瑕疵に関するAとBとの間の紛争について、あっせん、調停又は仲裁を受けることができる。
- AB間の新築住宅の売買契約において、当該新築住宅の構造耐力上主要な部分に瑕疵があってもAが瑕疵担保責任を負わない旨の特約があった場合、住宅販売瑕疵担保保証金の供託又は住宅販売瑕疵担保責任保険契約の締結を行う義務はない。
“Bが建設業者である場合、Aは、Bに引き渡した新築住宅について、住宅販売瑕疵担保保証金の供託又は住宅販売瑕疵担保責任保険契約の締結を行う義務を負わない。”誤り。買主が宅地建物取引業者である場合には履行確保措置の義務を負いませんが、買主が建築業者である場合には履行確保措置の対象となります(履行確保法2条7項2号ロ)。
“Aが住宅販売瑕疵担保責任保険契約を締結する場合、当該契約は、BがAから当該新築住宅の引渡しを受けた時から2年以上の期間にわたって有効なものでなければならない。”誤り。住宅販売瑕疵担保責任保険契約は、建物の引渡しから10年以上の期間にわたって有効なものでなければなりません(履行確保法2条7項4号)。
“Aが住宅販売瑕疵担保責任保険契約を締結した場合、A及びBは、指定住宅紛争処理機関に特別住宅紛争処理の申請をすることにより、当該新築住宅の瑕疵に関するAとBとの間の紛争について、あっせん、調停又は仲裁を受けることができる。”[正しい]。指定住宅紛争処理機関は住宅品質確保法に基づき設置されている組織で、紛争の当事者双方または一方からの申請により、評価住宅に係る住宅紛争処理(当該紛争のあっせん、調停及び仲裁)、住宅瑕疵担保責任保険契約に係る紛争処理の業務を行うことができます(履行確保法23条1項)。
“AB間の新築住宅の売買契約において、当該新築住宅の構造耐力上主要な部分に瑕疵があってもAが瑕疵担保責任を負わない旨の特約があった場合、住宅販売瑕疵担保保証金の供託又は住宅販売瑕疵担保責任保険契約の締結を行う義務はない。”誤り。新築住宅の売主は、買主に引き渡したときから10年間、住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵について担保責任を負います。これに反する特約で買主に不利なものは無効となります(住宅品質確保法94条)。したがって、本肢の特約をした場合でも、宅地建物取引業者は10年の瑕疵担保責任を負うことになり、その履行を確保するために、履行確保措置をする義務があります。
したがって正しい記述は[3]です。
宅建勉強12月2日(木)
住宅比較株式会社の吉田です。
宅地建物取引業者Aが、自ら売主として宅地建物取引業者ではないBを買主とする土地付建物の売買契約(代金3,200万円)を締結する場合に関する次の記述のうち、民法及び宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはどれか。
- 割賦販売の契約を締結し、当該土地付建物を引き渡した場合、Aは、Bから800万円の賦払金の支払を受けるまでに、当該土地付建物に係る所有権の移転登記をしなければならない。
- 当該土地付建物の工事の完了前に契約を締結した場合、Aは、宅地建物取引業法第41条に定める手付金等の保全措置を講じなくても手付金100万円、中間金60万円を受領することができる。
- 当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額を400万円とし、かつ、違約金の額を240万円とする特約を定めた場合、当該特約は無効となる。
- 当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額を定めていない場合、債務の不履行による損害賠償の請求額は売買代金の額の10分の2を超えてはならない。
“割賦販売の契約を締結し、当該土地付建物を引き渡した場合、Aは、Bから800万円の賦払金の支払を受けるまでに、当該土地付建物に係る所有権の移転登記をしなければならない。”誤り。宅地建物取引業者が自ら売主、宅地建物取引業者以外が買主となる割賦販売で、残代金について抵当権若しくは保証人の設定がある場合は、以下の時期までに所有権の移転登記等を済ませなければなりません(宅建業法43条1項)。引渡し時に代金の3割超を受領している引渡し時まで引渡し時に代金の3割超を受領していない代金の3割超の支払いを受けるときまで本問では「3,200万円×30%=960万円」が基準額となりますから、「800万円」とする点が誤りです。本肢は保証人や抵当権設定の有無が不明ですが、いずれにせよ誤りと言えます。
“当該土地付建物の工事の完了前に契約を締結した場合、Aは、宅地建物取引業法第41条に定める手付金等の保全措置を講じなくても手付金100万円、中間金60万円を受領することができる。”[正しい]。未完成物件においては、売買価格の5%または1,000万円を超える手付金等を受領する場合に保存措置を講じなくてはなりません(宅建業法41条1項)。

本問では「3,200万円×5%=160万円」が基準額となりますから、受領額の合計(100万円+60万円=160万円)はちょうどこの範囲に収まっています。したがって、保全措置を講じなくても受領することができます。“当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額を400万円とし、かつ、違約金の額を240万円とする特約を定めた場合、当該特約は無効となる。”誤り。宅地建物取引業者が自ら売主となる取引においては、損害賠償の予定額や違約金等の合計額が売買代金を2割を超えてはいけません(宅建業法38条1項)。
本問では「3,200万円×20%=640万円」が基準額となりますから、定めた額の合計(400万円+240万円=640万円)はちょうどこの範囲に収まっています。したがって有効な特約となります。
“当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額を定めていない場合、債務の不履行による損害賠償の請求額は売買代金の額の10分の2を超えてはならない。”誤り。損害賠償額の予定額を定めていない場合、民法の債務不履行の規定に基づき、実損額を請求できます。この請求額が売買代金の2割を超えても問題ありません。したがって正しい記述は[2]です。