不動産コンサルティングの住宅比較株式会社

スタッフブログ

2022.01.18

宅建勉強1月18日(火)

問12

AがBに対し、A所有の甲建物を3年間賃貸する旨の契約をした場合における次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか(借地借家法第39条に定める取壊し予定の建物の賃貸借及び同法第40条に定める一時使用目的の建物の賃貸借は考慮しないものとする。)。

  1. AB間の賃貸借契約について、契約の更新がない旨を定めるには、公正証書による等書面によって契約すれば足りる。
  2. 甲建物が居住の用に供する建物である場合には、契約の更新がない旨を定めることはできない。
  3. AがBに対して、期間満了の3月前までに更新しない旨の通知をしなければ、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされるが、その期間は定めがないものとなる。
  4. Bが適法に甲建物をCに転貸していた場合、Aは、Bとの賃貸借契約が解約の申入れによって終了するときは、特段の事情がない限り、Cにその旨の通知をしなければ、賃貸借契約の終了をCに対抗することができない。

解説

  1. “AB間の賃貸借契約について、契約の更新がない旨を定めるには、公正証書による等書面によって契約すれば足りる。”誤り。有効な定期建物賃貸借契約とするためには、公正証書による等書面によって契約するだけでは足りず、賃貸人から賃借人に対して、契約の更新がなく期間満了で終了する旨を記載した書面を交付して説明する必要があります(借地借家法38条1項借地借家法38条2項)。なお、この書面は契約書とは別個の書面でなければなりません(最判平24.9.13)。
  2. “甲建物が居住の用に供する建物である場合には、契約の更新がない旨を定めることはできない。”誤り。本肢のように、居住の用に供する建物である場合に定期建物賃貸借契約を締結できないといった規定はありません。居住用建物でも更新がない旨を定めることができます。
  3. “AがBに対して、期間満了の3月前までに更新しない旨の通知をしなければ、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされるが、その期間は定めがないものとなる。”誤り。期間の定めのある建物賃貸借では、賃貸人から賃借人に対して、期間満了の1年前から半年前までに更新しない旨の通知をしなければ、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法26条1項)。本肢は「3月前まで」としているので誤りです。
  4. “Bが適法に甲建物をCに転貸していた場合、Aは、Bとの賃貸借契約が解約の申入れによって終了するときは、特段の事情がない限り、Cにその旨の通知をしなければ、賃貸借契約の終了をCに対抗することができない。”[正しい]。建物の転貸借が期間満了や解約申入れにより終了する場合、通知なくして転借人に終了を対抗することはできません(借地借家法34条1項)。逆に捉えると債務不履行による契約解除の場合は、通知なくして転借人に対抗できるということです。
    したがって正しい記述は[4]です。
2022.01.17

宅建勉強1月17日(月)

問11

甲土地につき、期間を50年と定めて賃貸借契約を締結しようとする場合(以下「ケース①」という。)と、期間を15年と定めて賃貸借契約を締結しようとする場合(以下「ケース②」という。)に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. 賃貸借契約が建物を所有する目的ではなく、資材置場とする目的である場合、ケース①は期間の定めのない契約になり、ケース②では期間は15年となる。
  2. 賃貸借契約が建物の所有を目的とする場合、公正証書で契約を締結しなければ、ケース①の期間は30年となり、ケース②の期間は15年となる。
  3. 賃貸借契約が居住の用に供する建物の所有を目的とする場合、ケース①では契約の更新がないことを書面で定めればその特約は有効であるが、ケース②では契約の更新がないことを書面で定めても無効であり、期間は30年となる。
  4. 賃貸借契約が専ら工場の用に供する建物の所有を目的とする場合、ケース①では契約の更新がないことを公正証書で定めた場合に限りその特約は有効であるが、ケース②では契約の更新がないことを公正証書で定めても無効である。

解説

  1. “賃貸借契約が建物を所有する目的ではなく、資材置場とする目的である場合、ケース①は期間の定めのない契約になり、ケース②では期間は15年となる。”誤り。本肢の場合、資材置き場であり建物の所有を目的としないため借地借家法は適用されず、民法の規定が適用されます。民法では賃貸借契約の最長を50年としているため、ケース①は50年、ケース②は15年となります(民法604条)。
  2. “賃貸借契約が建物の所有を目的とする場合、公正証書で契約を締結しなければ、ケース①の期間は30年となり、ケース②の期間は15年となる。”誤り。本肢の場合、建物の所有を目的とするので借地借家法が適用されます。普通借地権については契約方法は定められていませんが、存続期間の最短が30年です(借地借家法3条)。よって、ケース①は50年、ケース②は30年となります。
  3. “賃貸借契約が居住の用に供する建物の所有を目的とする場合、ケース①では契約の更新がないことを書面で定めればその特約は有効であるが、ケース②では契約の更新がないことを書面で定めても無効であり、期間は30年となる。”[正しい]。居住用建物については事業用定期借地権等を設定できません。一般定期借地権の存続期間は50年以上なので、ケース①は50年、ケース②は50年未満なので更新のない定めは無効となり、普通借地権の最短期間である30年となります(借地借家法22条)。
  4. “賃貸借契約が専ら工場の用に供する建物の所有を目的とする場合、ケース①では契約の更新がないことを公正証書で定めた場合に限りその特約は有効であるが、ケース②では契約の更新がないことを公正証書で定めても無効である。”誤り。
    [ケース①]
    事業用定期借地権等は公正証書で契約しなければなりませんが、存続期間50年なので一般定期借地権として契約することも可能です。この場合、公正証書に限らず書面であれば問題ありません。
    [ケース②]
    存続期間15年の定期借地権を設定できるのは事業用定期借地権等だけです。本肢は工場の所有を目的としている(居住用ではない)ので、公正証書で契約すれば存続期間15年で更新がない賃貸借契約とすることができます。
    なお、10年以上30年未満の事業用定期借地権では「契約更新がない」「建物買取請求権がない」「築造により存続期間延長がない」旨の特約をしなくても上記の効果が生じます(借地借家法23条2項)。よって必ずしも「契約の更新がないことを公正証書で定め」ることは求められませんが、もし定めたとしても無効になるわけではありません。
    したがって正しい記述は[3]です。
2022.01.16

宅建勉強1月16日(日)

問10

債務者Aが所有する甲土地には、債権者Bが一番抵当権(債権額2,000万円)、債権者Cが二番抵当権(債権額2,400万円)、債権者Dが三番抵当権(債権額3,000万円)をそれぞれ有しているが、BはDの利益のために抵当権の順位を譲渡した。甲土地の競売に基づく売却代金が6,000万円であった場合、Bの受ける配当額として、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. 600万円
  2. 1,000万円
  3. 1,440万円
  4. 1,600万円

解説

抵当権は、一般の私債権よりも債権順位が上になります。また抵当権者の中では順位が若い方が優先して弁済を受けられるので、本問のケースでは、譲渡も放棄もなければ原則として以下のように配当されます。

  • B … 2,000万円
  • C … 2,400万円
  • D … 1,600万円

BからDに抵当権の順位が譲渡された場合、BD間ではDが優先して配当を受けます。BとDの配当の合計は「2,000万円+1,600万円=3,600万円」ですから、Dにはこの3,600万円が優先して配当され、残った額がBに配当されます。Dの債権額は3,000万円ですから、Dに3,000万円が配当され、Bの受ける配当は600万円になります。

  • B … 600万円
  • C … 2,400万円
  • D … 3,000万円

したがってBの受ける配当額は600万円です。

なお、BからDに抵当権の順位が放棄された場合、BDの配当の合計はBD間で債権額の割合に応じて配分されることになります。BとDの配当の合計は「2,000万円+1,600万円=3,600万円」、債権額は B:2,000万円、D:3,000万円ですから、BDの配当額の合計3,600万円は「B:D=2:3」で配分されることになります。

  • B … 1,440万円
  • C … 2,400万円
  • D … 2,160万円
2022.01.15

宅建勉強1月15日(土)

問8

Aを注文者、Bを請負人とする請負契約(以下「本件契約」という。)が締結された場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. 本件契約の目的物たる建物に重大な契約不適合があるためこれを建て替えざるを得ない場合には、AはBに対して当該建物の建替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができる。
  2. 本件契約が、事務所の用に供するコンクリート造の建物の建築を目的とする場合、Bの担保責任の存続期間を20年と定めることができる。
  3. 本件契約の目的が建物の増築である場合、Aの失火により当該建物が焼失し増築できなくなったときは、Bは本件契約に基づく未履行部分の仕事完成債務を免れる。
  4. Bが仕事を完成しない間は、AはいつでもBに対して損害を賠償して本件契約を解除することができる。

解説

  1. “本件契約の目的物たる建物に重大な契約不適合があるためこれを建て替えざるを得ない場合には、AはBに対して当該建物の建替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができる。”正しい。建物に重大な契約不適合があり、建て替えざるを得ないときは、建替えに要する費用相当額の損害賠償請求を行うことが可能です(最判平14.9.24)。
  2. “本件契約が、事務所の用に供するコンクリート造の建物の建築を目的とする場合、Bの担保責任の存続期間を20年と定めることができる。”[誤り]。請負契約の担保責任期間には売買契約の規定が準用されます。担保責任を負う期間は当事者同士の合意によって伸長できますが、担保責任の損害賠償権には消滅時効が適用されるので、一般債権の客観的消滅時効期間である10年を超える担保責任期間を定めることはできません(最判平13.11.27民法166条1項)。
    新築住宅建築の請負ならば、住宅品確法の定めにより特例で20年まで伸長可能(最低は10年)ですが、本肢は「事務所の用」ですので20年とすることはできません。
  3. “本件契約の目的が建物の増築である場合、Aの失火により当該建物が焼失し増築できなくなったときは、Bは本件契約に基づく未履行部分の仕事完成債務を免れる。”正しい。債務の履行が不能になった場合、債権者は債務の履行を請求することできなくなるため、債務者Bは残債務を免れます(民法412条の2第1項)。一方、帰責事由のあるAは請負代金の支払いを拒むことはできません(民法536条2項最判昭51.2.22)。
  4. “Bが仕事を完成しない間は、AはいつでもBに対して損害を賠償して本件契約を解除することができる。”正しい。請負人が仕事を完成しない間、注文者はいつでも損害を賠償して本件契約を解除することができます(民法641条)。
    したがって誤っている記述は[2]です。
2022.01.14

宅建勉強1月14日(金)

住宅比較の吉田です。

問7

Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約が締結された場合におけるBのAに対する代金債務(以下「本件代金債務」という。)に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. Bが、本件代金債務につき受領権限のないCに対して弁済した場合、Cに受領権限がないことを知らないことにつきBに過失があれば、Cが受領した代金をAに引き渡したとしても、Bの弁済は有効にならない。
  2. Bが、Aの代理人と称するDに対して本件代金債務を弁済した場合、Dに受領権限がないことにつきBが善意かつ無過失であれば、Bの弁済は有効となる。
  3. Bが、Aの相続人と称するEに対して本件代金債務を弁済した場合、Eに受領権限がないことにつきBが善意かつ無過失であれば、Bの弁済は有効となる。
  4. Bは、本件代金債務の履行期が過ぎた場合であっても、特段の事情がない限り、甲建物の引渡しに係る履行の提供を受けていないことを理由として、Aに対して代金の支払を拒むことができる。

解説

  1. “Bが、本件代金債務につき受領権限のないCに対して弁済した場合、Cに受領権限がないことを知らないことにつきBに過失があれば、Cが受領した代金をAに引き渡したとしても、Bの弁済は有効にならない。”[誤り]。受領権者以外の者にした弁済でも、債権者がその弁済により利益を受けた限度において有効となります(民法479条)。
    本肢は、Cが債権者であるAに代金を引き渡しているので、Bに過失があったとしてもAが受領した額を限度としてBの弁済は有効となります。
  2. “Bが、Aの代理人と称するDに対して本件代金債務を弁済した場合、Dに受領権限がないことにつきBが善意かつ無過失であれば、Bの弁済は有効となる。”正しい。Dは「受領権者としての外観を有するもの」に該当します。受領権者としての外観を有する者に対してした弁済は、弁済者が善意無過失のときに限り有効となります(民法478条)。
    Bは善意無過失ですからDに対する弁済は有効となり、代金支払債務は消滅します。
  3. “Bが、Aの相続人と称するEに対して本件代金債務を弁済した場合、Eに受領権限がないことにつきBが善意かつ無過失であれば、Bの弁済は有効となる。”正しい。Eは「受領権者としての外観を有するもの」に該当します。受領権者としての外観を有する者に対してした弁済は、弁済者が善意無過失のときに限り有効となります(民法478条)。
    Bは善意無過失ですからEに対する弁済は有効となり、代金支払債務は消滅します。
  4. “Bは、本件代金債務の履行期が過ぎた場合であっても、特段の事情がない限り、甲建物の引渡しに係る履行の提供を受けていないことを理由として、Aに対して代金の支払を拒むことができる。”正しい。売買契約は双務契約であり、双務契約の債務は同時履行の関係にあります。よって、Bは同時履行の抗弁権を主張してAへの代金支払いを拒むことができます(民法533条)。
    したがって誤っている記述は[1]です。
2022.01.13

宅建勉強1月13日(木)

住宅比較の吉田です。

問6

遺産分割に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

  1. 被相続人は、遺言によって遺産分割を禁止することはできず、共同相続人は、遺産分割協議によって遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
  2. 共同相続人は、既に成立している遺産分割協議につき、その全部又は一部を全員の合意により解除した上、改めて遺産分割協議を成立させることができる。
  3. 遺産に属する預貯金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割され、共同相続人は、その持分に応じて、単独で預貯金債権に関する権利を行使することができる。
  4. 遺産の分割は、共同相続人の遺産分割協議が成立した時から効力を生ずるが、第三者の権利を害することはできない。

解説

  1. “被相続人は、遺言によって遺産分割を禁止することはできず、共同相続人は、遺産分割協議によって遺産の全部又は一部の分割をすることができる。”誤り。相続開始から5年を超えない期間であれば、遺産分割を禁止する旨を記載した遺言も有効となります(民法908条)。
  2. “共同相続人は、既に成立している遺産分割協議につき、その全部又は一部を全員の合意により解除した上、改めて遺産分割協議を成立させることができる。”[正しい]。既に遺産分割協議が成立していても、その全部又は一部を共同相続人全員の合意により解除した上、改めて遺産分割協議を成立させることができます(最判平2.9.7)。
  3. “遺産に属する預貯金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割され、共同相続人は、その持分に応じて、単独で預貯金債権に関する権利を行使することができる。”誤り。遺産に属する預貯金債権は遺産分割の対象となり、相続開始と同時に当然に分割されるわけではありません(最判平28.12.19)。
    よって、遺産分割前は原則として被相続人の預貯金を単独で引き出すことはできません。ただし、民法改正で預貯金払戻し制度(民法909条の2)が創設され、遺産に属する預貯金債権の一部を単独で行使できるようになりました。
    なお、判例では、預貯金債権以外の可分債権は相続分に応じて当然に分割されるとしています(最判平29.4.8)。
  4. “遺産の分割は、共同相続人の遺産分割協議が成立した時から効力を生ずるが、第三者の権利を害することはできない。”誤り。遺産の分割は、相続開始時点に遡って効力を生じることとなります(民法909条)。後半の第三者の権利を害することはできないという部分は適切です。
    したがって正しい記述は[2]です。
2022.01.12

宅建勉強1月12日(水)

住宅比較の吉田です。

問6

遺産分割に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

  1. 被相続人は、遺言によって遺産分割を禁止することはできず、共同相続人は、遺産分割協議によって遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
  2. 共同相続人は、既に成立している遺産分割協議につき、その全部又は一部を全員の合意により解除した上、改めて遺産分割協議を成立させることができる。
  3. 遺産に属する預貯金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割され、共同相続人は、その持分に応じて、単独で預貯金債権に関する権利を行使することができる。
  4. 遺産の分割は、共同相続人の遺産分割協議が成立した時から効力を生ずるが、第三者の権利を害することはできない。

解説

  1. “被相続人は、遺言によって遺産分割を禁止することはできず、共同相続人は、遺産分割協議によって遺産の全部又は一部の分割をすることができる。”誤り。相続開始から5年を超えない期間であれば、遺産分割を禁止する旨を記載した遺言も有効となります(民法908条)。
  2. “共同相続人は、既に成立している遺産分割協議につき、その全部又は一部を全員の合意により解除した上、改めて遺産分割協議を成立させることができる。”[正しい]。既に遺産分割協議が成立していても、その全部又は一部を共同相続人全員の合意により解除した上、改めて遺産分割協議を成立させることができます(最判平2.9.7)。
  3. “遺産に属する預貯金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割され、共同相続人は、その持分に応じて、単独で預貯金債権に関する権利を行使することができる。”誤り。遺産に属する預貯金債権は遺産分割の対象となり、相続開始と同時に当然に分割されるわけではありません(最判平28.12.19)。
    よって、遺産分割前は原則として被相続人の預貯金を単独で引き出すことはできません。ただし、民法改正で預貯金払戻し制度(民法909条の2)が創設され、遺産に属する預貯金債権の一部を単独で行使できるようになりました。
    なお、判例では、預貯金債権以外の可分債権は相続分に応じて当然に分割されるとしています(最判平29.4.8)。
  4. “遺産の分割は、共同相続人の遺産分割協議が成立した時から効力を生ずるが、第三者の権利を害することはできない。”誤り。遺産の分割は、相続開始時点に遡って効力を生じることとなります(民法909条)。後半の第三者の権利を害することはできないという部分は適切です。
    したがって正しい記述は[2]です。
2022.01.11

宅建勉強1月11日(火)

問4

不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

  1. 放火によって家屋が滅失し、火災保険契約の被保険者である家屋所有者が当該保険契約に基づく保険金請求権を取得した場合、当該家屋所有者は、加害者に対する損害賠償請求金額からこの保険金額を、いわゆる損益相殺として控除しなければならない。
  2. 被害者は、不法行為によって損害を受けると同時に、同一の原因によって損害と同質性のある利益を既に受けた場合でも、その額を加害者の賠償すべき損害額から控除されることはない。
  3. 第三者が債務者を教唆して、その債務の全部又は一部の履行を不能にさせたとしても、当該第三者が当該債務の債権者に対して、不法行為責任を負うことはない。
  4. 名誉を違法に侵害された者は、損害賠償又は名誉回復のための処分を求めることができるほか、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対し侵害行為の差止めを求めることができる。

解説

  1. “放火によって家屋が滅失し、火災保険契約の被保険者である家屋所有者が当該保険契約に基づく保険金請求権を取得した場合、当該家屋所有者は、加害者に対する損害賠償請求金額からこの保険金額を、いわゆる損益相殺として控除しなければならない。”誤り。不法行為または債務不履行により損害を被った被害者が、同じ事由により利益を得た場合には、利益相当額を損害額から控除する場合があります。これを「損益相殺」といい、条文上は明記されていませんが学説・判例上異論なく認められています。ただし、受け取った火災保険金については、この控除される利益に当たらないという判例が示されています(最判昭50.1.31)。
    よって、当該家屋所有者は損害賠償請求金額からこの保険金額を、いわゆる損益相殺として控除する必要はありません。
  2. “被害者は、不法行為によって損害を受けると同時に、同一の原因によって損害と同質性のある利益を既に受けた場合でも、その額を加害者の賠償すべき損害額から控除されることはない。”誤り。肢1の解説通り、被害者が、不法行為によって損害を受けると同時に、同一の原因によって損害と同質性のある利益を既に受けた場合、損益相殺の概念により、その額を加害者の賠償すべき損害額から控除することがあります。
  3. “第三者が債務者を教唆して、その債務の全部又は一部の履行を不能にさせたとしても、当該第三者が当該債務の債権者に対して、不法行為責任を負うことはない。”誤り。不法行為を教唆した者も、不法行為責任を負うこととなります(民法719条2項)。よって、債務者を教唆した第三者も、行為者と連帯して債権者に対する不法行為責任を負います。
  4. “名誉を違法に侵害された者は、損害賠償又は名誉回復のための処分を求めることができるほか、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対し侵害行為の差止めを求めることができる。”[正しい]。名誉を侵害された者は、損害賠償のほか、名誉権に基づき侵害行為の差止め請求も可能です(民法723条最判昭61.6.11)。判例では、名誉侵害に当たる出版物の事前差止めを認めています。
    したがって正しい記述は[4]です。
2022.01.10

宅建勉強1月10日(月)

問2

AがBに甲土地を売却し、Bが所有権移転登記を備えた場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. AがBとの売買契約をBの詐欺を理由に取り消した後、CがBから甲土地を買い受けて所有権移転登記を備えた場合、AC間の関係は対抗問題となり、Aは、いわゆる背信的悪意者ではないCに対して、登記なくして甲土地の返還を請求することができない。
  2. AがBとの売買契約をBの詐欺を理由に取り消す前に、Bの詐欺について悪意のCが、Bから甲土地を買い受けて所有権移転登記を備えていた場合、AはCに対して、甲土地の返還を請求することができる。
  3. Aの売却の意思表示に要素の錯誤がある場合、Aに重大な過失がなければ、Aは、Bから甲土地を買い受けた悪意のCに対して、錯誤による当該意思表示を取り消して、甲土地の返還を請求することができる。
  4. Aの売却の意思表示に要素の錯誤がある場合、Aに重大な過失があったとしても、AはBに対して、錯誤による当該意思表示を取り消して、甲土地の返還を請求することができる。

解説

  1. “AがBとの売買契約をBの詐欺を理由に取り消した後、CがBから甲土地を買い受けて所有権移転登記を備えた場合、AC間の関係は対抗問題となり、Aは、いわゆる背信的悪意者ではないCに対して、登記なくして甲土地の返還を請求することができない。”正しい。意思表示の瑕疵により取り消しが行われた後に登場した第三者と取消権者は対抗関係に立ちます(大判昭17.9.30)。この場合、先に登記を備えた方が所有権を主張できるので、Aは登記を備えたCに対して返還を請求することはできません。
  2. “AがBとの売買契約をBの詐欺を理由に取り消す前に、Bの詐欺について悪意のCが、Bから甲土地を買い受けて所有権移転登記を備えていた場合、AはCに対して、甲土地の返還を請求することができる。”正しい。詐欺による意思表示の取消しは、善意かつ無過失の第三者に対抗することができません(民法96条3項)。逆を言えば、悪意や有過失の第三者に対しては詐欺による取消しを対抗できるということです。よって、取消権者Aは悪意のCに甲土地の返還を請求することができます。
  3. “Aの売却の意思表示に要素の錯誤がある場合、Aに重大な過失がなければ、Aは、Bから甲土地を買い受けた悪意のCに対して、錯誤による当該意思表示を取り消して、甲土地の返還を請求することができる。”正しい。意思表示に要素の錯誤がある場合、表意者に重大な過失がないことを条件に意思表示を取り消すことができます(民法95条1項)。ただし、錯誤による取消しは善意無過失の第三者には対抗できません(民法95条4項)。
    本肢の第三者Cは悪意ですので、重過失のないAはCに対して取消しを対抗することができます。
  4. “Aの売却の意思表示に要素の錯誤がある場合、Aに重大な過失があったとしても、AはBに対して、錯誤による当該意思表示を取り消して、甲土地の返還を請求することができる。”[誤り]。肢3のとおり、意思表示に要素の錯誤がある場合、表意者に重大な過失がなければ意思表示を取り消すことができます。重大な過失がある場合でも、相手方が悪意または重過失、または相手方が同一の錯誤に陥っていたときには取り消しできますが、本肢はどちらの記述もないので取り消せません(民法95条3項)。
    したがって誤っている記述は[4]です。

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