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【改革】2拠点居住という住まい方

こんにちは。住宅比較の森田です。時代の変化とともに、今やマイホームは一生ものの一軒というイメージではなくなってきました。さらに現在、住み替えよりも先をいく、「2拠点居住」という住まい方が注目されてきています。今回は2021年7月5日の日本経済新聞より、三菱地所等企業や全国自治体が後押しするこの2拠点居住という住まい方についてご紹介します。

かつては富裕層が別荘としてセカンドハウスを持つのが一般的でしたが、今は地域振興につなげたい自治体、アイディアを生み出したい企業が後押しし、暮らしと仕事を一体化したデュアルライフ(都市部と農山漁村を行きかうライフスタイルを指す和製英語。2拠点居住のこと)を気軽に楽しめる時代なのです。

三菱地所はコロナ拡大以前の2018年から、社員の自由な働き方を推奨してきました。テレワークのほか、フレックスタイムも導入。これは都市開発を手掛ける企業ゆえに、社員が様々な地域と接点を持ち、いろいろなアイディアや考え方を身につけるべきとの思いからです。2019年には勤務時間の10%超を通常業務以外の活動に必ず充てるようにする制度を始めました。多くの社員が仕事と生活の結びつきを強めることになり、企業側も2拠点居住の経験を仕事に取り入れることを評価します。ある社員は2拠点居住をして地域の活動に参加することで、その地域は若者の流出が深刻であること、手入れされずに荒れた里山があることが見えてきたといいます。そこで地元ならではのバイオマス事業を思いつき、自治体と三菱地所が事業化に向けた話し合いが始まり、2021年からは自らが事業担当になりました。生活や趣味と仕事がつながるとやりがいもひとしおです。

アクセンチュアの社員にも2拠点居住を実行した社員がいます。東京でのマネジメントをしていて、地方でのスマートシティー事業が決まった際、出張での対応を考えていましたが、思い切って事業先の近くの土地を購入し家を建てたのです。「東京から来てるんだね」とその地方の顧客に言われて距離を感じたのがきっかけだといいます。企業側にとって、2拠点居住は本気でその地方の街づくりに取り組んでいる姿勢を見せることにもつながります。

2拠点居住は富裕層だけの特権ではありません。うち34%ほどは世帯収入600万円未満の人なのです。実際コストもそれほど大きくはなく、南房総では500坪の土地が数百万円台で購入できるエリアもあります。税負担も意外と負担は増えません。2拠点で生活をしていても住民税を払うのは原則1か所。また月1回以上の利用実態がある「居住用財産」とみなされれば固定資産などもぐんと軽くなります。最安は数万円台の場合も。また地方自治体の新幹線乗車券補助や空家リフォームの補助、企業の社宅としての2拠点居住支援など、様々な側面から2拠点居住が推し進められているのです。

2拠点居住の居住者で最も多い世代は30台の29%、40代以上のシニア世代も4割を超えます。2拠点居住の在り方にも各世代のライフスタイルが反映されます。20~30代は子供に多様な経験を積ませたいと考え、年齢が上がるごとに、趣味と2拠点居住が結びつく傾向がありますす。50代の多くは退職後のセカンドライフとして地方での生活を想定し、試験的に2拠点生活を始めるようです。時間をかけてコミュニティに溶け込んだうえで軸足を地方に移すことができるからです。

不動産流通経営協会が2拠点居住の積極的理由について調査したところ、一番は「自分の時間を過ごすため」。仕事へのプラス効果を見込んでいる人も少なくありません。

過疎化に直面している地方側にも利点は大きいです。移住とは異なり税収にはつながりませんが、その自治体と接点を持つ「関係人口」を増やすことができます。国交省と全国自治体も2拠点居住促進のための協議会を設立しました。外部からの人材受け入れによる新しいつながり、ひいては地域活性化の取り組みが広がる期待がもてます。

2拠点居住をする人の満足感は大きいです。旅行で十分と思っていた人も、2拠点生活をすることによって一時的滞在には替えがたい価値を感じている意見もあります。コンサルタントは「より自由な生き方を探る有効手段」と指摘します。2000年代、仕事と生活を分けて両立するライフワークバランスがブームになりましたが、2拠点居住は逆に一体化の流れといえます。「どう生きるか」という人生設計を、責任は伴うとも自らデザインできる時代が始まりました。自分の生き方に枠をはめて無難に「みなと同じ」を目指しがちですが、そうした息苦しさの突破口になることが期待できそうです。

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