不動産コンサルティングの住宅比較株式会社

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【市場】大和ハウスの生き残り戦略

こんにちは。住宅比較の森田です。

新型コロナウィルスの感染拡大をきっかけにリモートワークが普及し、好調が続いていた一戸建て市場を、いま「三重苦」が襲っています。

土地代の高騰

建設コストの上昇

実質賃金の低下

ハウスメーカー側にとっての危機である土地代高騰と建設コストの上昇、購入側にとっての悩みである賃金アップの低迷。この結果、ファミリー層の購買意欲がそがれています。

今回は週刊ダイヤモンドより、戸建バブル崩壊秒読みの戸建市場における、大和ハウスの生き残りをかけた施策をご紹介します。

分譲シフトしつつ、注文をあきらめない

主力である注文住宅をいじしつつ、分譲住宅に軸足を移す「分譲シフト」に踏み切ったのは大和ハウス。戸建事業の立て直しを図り、ライバルメーカーに反撃を開始すべく大暴れしています。また、全国の支店長以上クラスの人事評価項目に「土地の仕入れ目標」「回転率」を設定したことで、各支店の分譲住宅用地爆買いが始まりました。

いくら用地を確保出来ても、商品が売れなければ意味がありません。競合他社を落とすために高値で仕入れた場合、コストの削減が必須になります。

そこで大和ハウスは「分譲シフト」に合わせて3つの営業戦略をとります。

1.設計レス

累計65万戸の一戸建て住宅のデータを活用し、人気が高いプランを基にした規格商品「スマートセレクション」を開発しました。つまり、設計レスの「注文住宅」です。これにより、従来の自由設計の注文住宅に比べて14~18%の費用抑制に成功しました。

2.人員配置

これまで分譲住宅と注文住宅を一人の社員が兼務していたところ、売り方が全く違うとして、分離しました。

3.分譲住宅の完成後販売

これまで分譲住宅は、完成する前から販売活動が展開されていましたが、分析によると、契約に至ったほとんどが、分譲住宅完成後に内見を済ませてからでした。つまり完成前の販売活動が非効率だったということになります。そこで、分譲住宅の完成前はホームページなどでの告知にとどめ、完成後に営業部隊による本格的な販売活動を始める手法に切替えました。

3つの戦略を打ち出した結果、分譲シフト宣言後の初陣は上々。23年10月~12月の分譲住宅の販売棟数は、前年同月比20%増。完成在庫は1800棟に上ります。

もっとも、分譲シフトにあっても、大和ハウス主力の注文住宅もあきらめていません。分譲住宅のブランドの一つで、注文住宅の高品質ブランドの名称を入れた「まちなかジーヴォ」も展開、顧客などの紹介による注文住宅への誘導も狙います。

注文住宅が主力のハウスメーカーが、分譲住宅に参戦するのはきわめて珍しいです。他メーカーには、「大和ハウスの分譲シフトは、ハウスメーカーの看板を下ろしたも同じ」と揶揄されています。

しかし、ここまでしなければならないほど、大和ハウスの住宅事業はおいつめられていたということです。

市場が縮小する中でも、大和ハウスは本気でマーケットシェアを取りに来ています。住宅業界の勢力図が変わる日も近いかもしれません。大和ハウス以外にも、バブル崩壊まで秒読みとされている住宅市場では、さまざまなメーカーがあの手この手で生き残り戦略を掲げています。これらの戦略が吉と出るか凶と出るか、今後のマーケットの動きに注目です。

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【素材】輸入木材、在庫が半減

こんにちは。住宅比較の森田です。

今、住宅の柱や梁などに使う輸入木材の在庫が減っています。東京地区の輸入木材在庫は直近ピークの2022年8月に比べて半減しました。

新型コロナウィルス流行時によく耳にした「ウッドショック」から数年、木材の価格は下落が続いています。

今回は2023年2月8日の日経新聞より、輸入木材在庫減少の背景と現状をご紹介します。

背景は住宅向け需要の低迷

日本で流通する住宅用木材のうち、梁をはじめとする横架材の9割、柱の5割が輸入品です。

需給バランスを取るために輸入会商社が調達を控えました。農林水産省によると、2023年の製材品輸入量は333万4030㎥と、前年を32%下回りました。

キッチンなどの設備代や、人件費などの建築コスト増加で住宅の販売価格が上がり、買い控える消費者が多くなりました。国交省によると2023年12月の木造新築着工数は3万5730戸と前年同月比4%減でマイナスが21ヶ月続いています。

2023年夏には、大手製材会社の中国木材主要工場が火災で稼働停止。中国木材は木造住宅の梁に使う木材で3分の1ほどのシェアを握り、梁に使うアメリカ松材の流通量が激減しました。しかし都内の木材問屋の見解は、需要は弱く不足感はほんの一時のこととのこと。

在庫量の変動が大きくなったきっかけは、新型コロナの感染拡大でした。

海上物流が不安定となり入荷予定が見えづらくなったうえ、アメリカで巣ごもり中のリフォーム需要がきゅうかくだいしたのを発端としたウッドショックで世界的に木材価格が高騰しました。

日本でも住み替えやリフォーム需要が高まり、木材の不足感が強まりました。当時輸入商社はこぞって手当てを急ぎ、輸入木材を補完する東京湾岸竿いの物流施設では、「木材が倉庫に入りきらなくなり野積みされていた」ほどです。

流通価格は4万円減へ

木材の流通価格はすでに下落しており、アメリカ松材は2021年夏から2022年夏まで1㎥12万円でしたが、2023年後半には8万円台まで下がっています。

1月末時点の在庫量は、コロナ前の2019年を3割下回ります。木材流通会社の担当者は、コロナ前では考えられない少なさではあるものの、適度な水準とみています。

4月以降は建築にかかわる技術者の就労時間が制限されます。

「駅前再開発や大規模施設の建設に職人が流れ、家を建てる担い手が不足する」と予測する声も。

低い在庫水準はマーケットの縮小を示しており、商社や流通など各段階で再編が進む可能性があると大手木材流通会社の担当者は指摘します。

埠頭の倉庫外に山積みになった木材の写真を見て衝撃を受けたことを思い出します。新型コロナ感染拡大時は中古マンションが高騰しているニュースをよく見かけました。新築を控える動きが都内の中古マンションの価格高騰の一因であったと記憶しています。急いで木材を輸入して倉庫に入りきらないのに、消費者が注文住宅に消極的で乖離が生じている印象だったため、まだ木材は余っているものだと思っていました。

コロナが1年の始まりから明けている今年、各業界の巻き返し策が試されることでしょう。木材を追えば新築住宅の市場が見えてきます。今後の動きに注目です!

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【DX】高度化するスマートシティ像

こんにちは。住宅比較の森田です。

AIや通信技術等の高度化に加え、脱炭素化の潮流や頻発する大規模災害といった社会環境の変化に伴い、先端技術で都市マネジメントの高度化を目指す

スマートシティ

を推進する動きが加速しています。同時に、当初はエネルギーマネジメントに主眼を置いていたスマートシティですが、現在は目的や事例の多様化・高度化も進んでおり、足元では国の検討会で

ウェルビーイング

に焦点を当てた議論が進められています。しかしスマートシティ化が本格的に普及・定着したとは言い難く、官民ともに模索を続けている様子も見られます。今回は1月23日の住宅新報より、ウェルビーイングに貢献するか、本格移行に期待が集まるスマートシティ化の現状を、国の直近の検討状況や自治体の事例等からご紹介します。

ウェルビーイングとは

「ウェルビーイング」とは、個人や社会の持続的で本質的な幸福感の意味で、生活の選択肢を広げ、自己決定を促すモノやサービス、施策を提供することです。取り組みは中小企業にも広がっており、人材を資本として投資する人的資本経営や、株主、社員や顧客、地域など様々な関係者を大切にすることを目指します。(カオナビセミナー 代表理事石川氏の解説より)

スマートシティ化の沿革

スマートシティは街づくりの概念として国内で提唱されることが増え、関心が高まったのは2010年頃とされています。そして2010年代半ばごろから、具体的な事例の本格稼働が見られるようになりました。

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【ADR】裁判「外」でトラブル解消

こんにちは。住宅比較の森田です。

新年早々、能登半島地震が発生しました。実は元日に金沢から帰るところだった私。一足遅かったら今もこの記事を書けていないかもしれません。長野まで戻っていても新幹線は3時間止まりましたし、マグニチュードも大きく、広範囲で被災された方がいたと思います。

これ以上被害が拡大しないことを祈りつつ、こういった災害は、コンプライアンス整備と違って不動産トラブルにおいて防げない事案です。この時の当事者はどちらも震災の被害者といえ、裁判で解決するにはコストが高く疲弊も重なることは明らか。今回は2024年1月16日の住宅新報から、災害時に不動産業者が直面しがちなトラブルのパターンと、その対策についてご紹介します。

ADR:裁判外紛争解決手続

ADR(Alternative Dispute Resolution:裁判に代替する紛争解決手段)とは、法律を厳格に適用する裁判所での解決ではだれも望まぬ結果になりかねない、複雑な民事事件について、法律を別視点から見ることで柔軟な解決を目指す、弁護士会が運営している紛争解決センター です。まず当事者たちの話を聞き、証拠を検討したうえで、紛争の解決基準を作ります。民事上のトラブルを柔軟な手続により、短期間に、合理的な費用で、公正で満足のいくように解決することがその目的です。

(参考:日本弁護士連合会:紛争解決センター(ADR) (nichibenren.or.jp)

ここからはADRによって解決に至ったトラブルのケースを見ていきましょう。

ケース① 入居者(A氏)と賃貸オーナー(B氏)

■状況

A氏はB氏がオーナーである賃貸マンションに住んでいたが、震災により建物が被災し引っ越すことを決めた。ここでB氏がA氏に提示した

A氏に原状回復費用を負担する義務がある箇所

について、震災によって損耗した箇所が含まれているのではないかということがトラブルに。

■ADRにおける結果

震災による損耗箇所に関してはA氏の負担ではないとして、A氏の求めた敷金の返金額にB氏が応じる

ケース② 隣人同士のC氏・D氏

■状況

戸建に住む隣人同士だったC氏とD氏。。D氏の敷地にあった

ブロック塀が震災によって倒壊し、C氏の所有する自動車を破損させた。

C氏はD氏に修理費用の全額負担を要求したが、D氏は不可抗力の災害によるものだとこれを拒否した。

■ADRにおける結果

D氏が今後のC氏との関係性を大切にしたいと修理費用の半額負担を提案。C氏も了承して和解成立。

ケース③ ビルオーナー(E氏)とテナント(F氏)

■状況

E氏の所有するビルの1階で飲食店を営んでいたF氏。

震災の際店舗自体は被害を免れたが、危険な状態として周囲にテープ

が張られることに。店舗経営ができないF氏がE氏に補修を求めたが、E氏がこれに応じずトラブルへ。

■ADRにおける結果

F氏が店舗設備の撤去費用を負担する代わりにE氏が解決金を支払い、加えて賃貸借契約を合意解除するという形で和解に。

誰が悪いわけでもない天災によって発生するトラブル。責任の所在をハッキリさせる裁判よりも、まずはADRへの相談を事業者が案内することによって、費用も、時間も、何より心の負担も抑えた解決法が見つかるはずです。

▼日本弁護士連合会が運営する全国のADRはこちら。

日本弁護士連合会:紛争解決センター(ADR) (nichibenren.or.jp)

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【DX】一石三鳥の不動産マッチングサービス

こんにちは。住宅比較の森田です。

弊社は一般消費者のお客様から売却物件をお任せいただき、住宅を建てたいハウスメーカーのお客様へご紹介する取組を行っています。

私たちがメインで行っている事業はこのように一般売主と一般買主の売買ですが、エリアや金額の不一致でなかなかお客様が決まらず、すぐに契約が決まらないケースもあります。

今回は、すぐに現金化したい一般消費者と、情報が不透明なまま購入したくない買取業者、そして機会損失を防ぎたい仲介業者と三者の悩みを解消する不動産のマッチングサービスを、9月12日の住宅新報よりご紹介します。

不動産を現金で購入してくれる「買取業者」

売主様の中には、早く現金が必要だから売却したいという方もいらっしゃいます。「買取業者」はそんな人の味方。相場より安くなってしまいますが、基本的に現金で買ってくれるので、売主様としてはすぐに現金化できるのでメリットもあるのです。

買取案件発生時の流れ

今まで、売却で早く現金化したい売主は、相場の6~8割の価格で、買取業者の中から比較的高く買う事業者を探すしかありませんでした。相場価格で売る場合も仲介業者に委託しますが、いつ売却できるかがわかりません。一方、買主はなるべく相場より安く買いたくても、そうした情報が得づらいというのが現状でした。

三者に嬉しい「急掛(キュウガケ)」

不動産売買仲介のワッフルは、エステートテクノロジーズと共同で開発した不動産マッチングサービス「急掛」で、一般消費者向けに加え、不動産売買仲介会社向けとしても、9月から展開を始めています。従来の買取事業者を介在させる「仲介手数料」の収入ではなく、第三者の買主のために不動産仲介会社自体が「自社買取」の形で売主の立場になったうえで買主を募るため、利幅を増やせるというものです。

このサービスは、売主の売却価格が相場の9割になる代わりにすぐ現金化できます。住宅ローンを組みづらい創業間もない経営者などの買主は、9割で買える代わりに、現金で購入します。その9割の価格は、エステートテクノロジーズ運営の不動産情報サービス「Dr.Asset」のAI価格査定システムに基づき提示できます。

この仕組みを今回応用し、不動産事業者は早く現金化したい売主から手数料なしで相場の7割程度で自社買取します。

買主は、相場の9割で購入するため、その差額の2割程度が利益になりえるのです。

第三者のために取引を行う不動産仲介事業者にとっては、このシステムに登録している購入意欲の高い買主にアプローチできます。

従来よりも成約の角度が高まり、買主探しや追客の手間が軽減されることが期待されています。

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【政策】定期預かりで保育施設定員割れ解消

こんにちは。住宅比較の森田です。

2016年に話題になった「保育園落ちた日本〇ね」のブログ。希望しても保育園等に入所できない

待機児童

が問題になっていました。あれから8年ほどたち、東京23区では待機児童の解消が進んだ一方、今度は

保育施設の定員の空き

という新たな課題が浮上しています。待機児童対策として定員を増やしたところ、少子化の進行で定員割れが目立ってきてしまったのです。今回は、12月1日の日経新聞より、23区の一部が経営の悪化を防ぐために乗り出した

未就園児の定期預かり

というシステムについてご紹介します。

条件未満で保育施設に入れない子もOK

定期預かりは、未就園児を週に数回、一定期間継続して預かってくれるものです。

一般的に保育施設に子どもを預けるためには、保護者が就労要件を満たしている必要があります。この条件が案外厳しくて困っている共働き夫婦も多いのではないでしょうか。

しかし!!要件を満たせず保育施設に通わせていない世帯も、このシステムは利用できます。

政府は2023年度「こども誰でも通園制度(仮)」として試行を始め、都内の一部自治体がモデル事業に参加しています。

問題は待機児童から定員割れへ

日経新聞の調査では多くの区が22年度までに待機児童を解消し、今年度は23区中なんと21区がゼロ。

ただし、待機児童対策で定員を増やしてきた施設も多いほか、少子化の想定以上の進行や育児休業の取得率向上等から、ここ数年でむしろ保育施設の定員割れが増えた区が多いのです。

保護者の需要と事業者の負担増加のバランスを見極める

モデル事業に参加した中野区では、8月から0歳児クラスに限って週1~2回の定期預かりを募集した結果、保護者からの評判は上々。

一方文京区では、もともと待機j同対策として設置された臨時保育所に、定期預かりに特化した保育部屋と保育士を準備し、定員30人で募集したところ、16倍の179人が応募。ほとんどが0~2歳児だったとのこと。10月から新たな保育施設でも、0~2歳児に限って募集したところ、定員28人に対して200人以上の応募がありました。

この制度は保護者の評判が良いので本格施行された際の育児支援効果が期待できる一方、受け入れ事業者側の負担増加が課題として浮かんできています。ただでさえ義務教育ではない保育施設、定期預かりで通う子どもは通常保育よりさらに環境になれるまでに時間がかかり、保育側のスキルも必要になります。

試行期間中に、子育て世帯側(需要)と事業者側(負担)のバランスを見極めることが重要視されています。

埼玉県の一時預かり事業

埼玉県でも定期ではありませんが一時預かり事業は行われており、HPから受け入れ業者を見ることができます。

一時預かり事業一覧 – 埼玉県 (saitama.lg.jp)

春日部市内でも18施設が受け入れ可能施設となっていました。

弊社では物件の周辺施設を調査する際、保育施設の空き状況もなるべく確認しておりますが、そういえば0歳から2歳くらいの定員は埋まっていて、それ以降は空きがあると回答されたことがよくあったような気がします。

一番目が離せない年齢、でも働かないといけない。この悩みを抱えている保護者と、定員割れによる経営悪化を防ぎたい事業者が手を取り合って子育て支援が全国に広がれば、「働けない」が理由で結婚しない人の心情にも変化が生じるかもしれませんし、ひいては少子化対策につながるかもしれません。

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【市場】続く中古物件の成約価格上昇

こんにちは。住宅比較の森田です。中古マンションの需要が高まっており、全国的に成約件数、価格ともに上がっています。

8月22日の住宅新報より、首都圏直近7ヶ月の市況をご紹介します。

【首都圏全体】

中古マンションは前年同期比が成約件数、成約価格、在庫件数ともに上昇しています。

中古戸建は19か月連続で成約件数が減少しています。しかし成約価格は上昇。

【エリア別】

全体で見ると中古マンションと中古戸建の成約件数のギャップは3%ほどに感じますが、エリアごとに見ると中古マンションの成約件数に対して中古戸建の成約件数減少が著しい場所が多いことがあります。中古マンションより中古戸建の成約件数の上昇率が大きかったのは都区部のみだと分かります。

あくまで推測ですが、最近は古民家をリノベーションして投資物件として販売する事業が人気なので、都区部の戸建を相続した人が売却している可能性もあるのではないでしょうか。

中古マンションの成約件数、成約価格の上昇は未だ止まることは無さそうです。

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【土地】選ぶ基準に浸水リスクを

こんにちは。住宅比較の森田です。最近の異常といえる台風や集中豪雨で、今まで危険とされていた地域以外の都市もニュースに上がるようになりました。今回は8月24日の日経新聞より、現実が想定に近づいている日本の異常気象状況と浸水リスクを考えた住宅地選びについてご紹介します。

防災指針策定3割止まり

2014年に設けられた「立地適正化計画」制度は、人口減少に対応したコンパクトシティ化を進めるもので、災害リスクを避けた居住誘導区域を設けるよう自治体に求めています。リスクのあるエリアを同区域に指定する場合は「防災指針」を定めて防災機能を高めるよう要請していますが、2023年3月末時点で、立地適正化計画を公表した504都市のうち、防災指針を策定済なのは3割の172都市にとどまります。

防災科学技術研究所によると、6月に発生した台風2号では愛知県豊橋市などで「100年に1度」より発生頻度が低い「まれな雨」が降りました。国は2015年の改正水防法で、洪水ハザードマップの浸水想定を100年に1度の雨から「1000年に1度」に見直しましたが、現実が想定に追いつこうとしてます。

激化する水害への対策は、自治体と住民が浸水リスクと向き合い、水害に強いまちづくりを急ぐ必要があります。

住みやすい地域に潜む浸水リスク

日経新聞の調べでは、3m以上(住宅2階部分)が浸水するおそれのある市街地には約790万人が暮らし、その数は20年で約60万人増えています。

■千葉県流山市

子育て環境が充実している千葉県流山市。市が優先して開発を進める「市街化区域」の約2割を3m以上浸水するおそれのある洪水浸水想定区域が占めます。区域外にある避難所の収容人数では区域内の住民を賄えず、水害発生時には多くの人が行き場を失う可能性があります。

■埼玉県川越市

人口流入が続く都市のひとつ、埼玉県川越市は、荒川や入間川に沿って低地が広がっており、3m以上の浸水想定区域には約1万5000人の住民が暮らしています。子どもが増えて小学校も増築され、生活環境が良い「南古谷駅」での予想最大浸水深は5~10m。大半の一戸建てが浸水する危険がありますが、地域の一部は居住誘導区域に指定されたままです。

■岡山県総社市

清音駅周辺地域では100~200年に1度の大雨浸水想定が5mを超えます。市内では農地を住宅地に転用する動きもあり、浸水エリアの人口増加に拍車がかかっています。同市は2m以上の浸水想定区域を居住誘導区域から外しましたが、人口の流入を法的に規制する手立ては少なく、人口増加へのポジティブな面との葛藤が続きます。

「知らなかった」被害を無くすために

近年は異常気象が多発し、台風や集中豪雨の被害は後を絶ちません。一級河川(国に指定されるレベルの川)でない流域の街も浸水被害にあっており、100年に1度、1000年に1度の想定に現実が迫ってきているのです。

水防法の規定に基づき各自治体が発行している「洪水ハザードマップ」では、前述したとおり改正された降雨想定で浸水リスクを発表しています。実際に見てみると、一見川から離れているような地域でも、一級河川の浸水想定区域になっていたりします。

「近くに大きな川もないし大丈夫だろう」ではすまない状況になっている現実を認識し、土地探しや家探しの際には立地や生活環境とともに浸水リスクも選ぶ基準にすることをおすすめします。

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【住まい】老若繋げる不動産界の取り組み

こんにちは。住宅比較の森田です。近年、高齢化社会を受けて様々なタイプの高齢者向け住宅が界隈に進出していますが、最近は、高齢者同士だけでなく、外の輪を広げる取り組みもなされています。

本日は令和5年7月20日の日経新聞より、高齢者の見守りを不動産から支援する企業をご紹介します。

新時代の賃貸:多世代賃貸住宅

神奈川県藤沢市にある賃貸住宅

ノビシロハウス

は、高齢者と若者が住む多世代賃貸住宅です。偶然入居者の世代が離れているというわけではなく、両者が交流を持つための工夫で経営されています。


■若者は家賃半額

この物件、通常家賃は7万円ですが、8室中2室は半額です。SUUMOで相場を出すと、藤沢市の賃貸相場は駅至近のワンルームで約6.5万円。すぐ近くにある日大に通う学生さんにとっては相当な格安物件といえます。

■高齢者との定期的な交流を約束

この2室には、同じアパートに住む高齢者へ定期的に声をかけ、異常を感じたら管理会社へ報告、月一回のお茶会にも参加するという条件で10~20代の若年層が入居しています。


高齢者にとっては、見守られているという感覚で若者との交流は刺激になります。

企画運営会社代表の鮎川氏は、「若者には人生の晩年を見届ける貴重な機会になる。」とみています。核家族が主流になった現代の若者にとって、近所のお年寄りとの触れ合いが新しい形で提案されています。

敷地内に介護施設があるホテル

株式会社ゆずが手掛ける、

尾道のおばあちゃんとわたくしホテル

(ホームページ)は、広島県尾道市で2022年6月に開業しました。同敷地内の多機能型居宅介護事務所、

ゆずっこホームみなり

も同会社が運営し、施設に通う高齢者が自らの希望や体調に応じてチェックイン時の接客や部屋の準備を手伝っています。利用者自身、仕事をすることに、楽しさや充実感をもてるようです。

会社代表の川原氏は、「家のように多くの時間を過ごす介護施設で、外と触れる機会を持てるように」、開かれた住まいを展開。観光地として弱く、高齢者が多いという点を逆手に取り、介護スタッフが常駐するおしゃれなバリアフリーホテルは、人混みや観光疲れしがちな祖父母世代との旅行を安心で快適なものにするサポートをしています。

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